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BLOG 開発者ブログ

2025年12月16日

運用設計って何をするの?-運用設計はじめの一歩-

本記事では、運用設計の基本からシステム設計との関係、引き継ぎのポイント、よくある落とし穴までを整理しました。
開発者・運用担当者双方に役立つ、実践的な視点をまとめていますので、運用設計とはの第一歩として読んでもらえるような
内容になっていると思います。

はじめに

この記事はアイソルートAdvent Calendar 2025 11日目の記事です。

こんにちは、アイソルートのtakasago.yです。
普段は運用設計や運用のアセスメントを中心に、システム運用に関する業務改善や最適化の支援を主な業務領域としています。

今回は、私自身の専門領域である、「運用設計」について、

  • 運用設計とは?
  • システム設計との関連性
  • 運用担当への引き継ぎ
  • 運用設計時の落とし穴

の観点で再整理を行いました。

運用や運用設計を行っている方だけでなく、システム開発をしている方にとっても、「運用」について考えるきっかけになれば
うれしいです。

運用設計とは

運用設計とは、システムの本番稼働後に必要となる「日々の維持・管理・保守」を、どのように実施するかを事前に定義することです。
具体的には、次のような項目が含まれます。

  • 運用対象のシステムの概要や業務内容を記載した運用設計書
  • 問合せ受付や障害発生時の対応フロー
  • 運用業務で実施する項目を洗い出した運用項目一覧
  • 運用を行う際に使用する運用管理台帳(最近はITMSツールなどで管理することも増えています)

これらを明確にしておくことで、運用担当者が運用方法に迷うことなく対応でき、システムの安定稼働につながります。

また、運用設計を行うにあたっては、FISC、デジタルガバメント標準ガイドラインなどといった、
各業界で順守すべき基準・実施内容をまとめたガイドラインや、ITILなどのフレームワークを参考に整理を行う必要があります。
前述のような各種ガイドラインに対する理解も求められるため、知識や経験が重視される分野でもあります。

システム設計と運用設計の関連性

運用設計はシステム設計と密接に関係しています。
たとえば、SaaS を利用する場合には、

  • ユーザにどこまで権限を付与するか
  • 設定変更を利用者が行うのか運用者が担うのか
  • 影響の大きい操作をどう管理するか

といった“役割分担”を設計段階で明確にしておく必要があります。

例えば、上記のようにシステム設定変更は運用担当が担う、といったように役割を定義ができていないと、運用負荷の増大や、
誤操作によるトラブルの発生リスクが高まり、システムの稼働品質やセキュリティ性を保つことが難しくなります。

運用設計から運用担当への引き継ぎについて

運用設計の完了が見えてきたら、その内容を運用担当者へ適切に引き継ぐことが重要です。
ここでは、設計内容を正確に共有することと、運用担当の実際の体制や運用方法に即して運用を現実的な形に
調整することの2点が不可欠です。

まず、設計者が持つ前提や意図を運用担当者に正しく伝える必要があります。
運用設計書やフロー、台帳類の整備に加え、実機を使ったハンズオンや障害対応のシミュレーションを通じて、運用時に必要となる
情報を確実に共有できます。

一方で、設計段階で想定した運用フローが、そのまま現場で実行できるとは限りません。
運用体制の人数やスキル、現場特有の制約を踏まえつつ、どこを柔軟に調整し、どこを必ず厳守すべきかを運用担当者と
すり合わせることが求められます。

これらのプロセスを丁寧に進めることで、引き継ぎ後の混乱を抑え、実現性の高い運用体制を構築できます。

運用設計で陥りがちな課題

運用設計には、いくつかの落とし穴があるため、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 設計が理想論に偏りすぎる
    実際の運用体制やスキルを考慮しない設計は、現場で機能しないため、妥協すべき点は妥協したり、お客様と合意したりする必要があります。
  • ドキュメントが不十分
    設計内容について、お客様と合意した内容が運用資料に反映されていないと、引き継ぎ後に混乱が生じてしまいます。
    また、設計内容の変更点などもしっかり記録し、その設計内容に至った経緯を整理しておく必要があります。
  • 運用負荷の見積もりが甘い
    監視や対応に必要な工数を過小評価すると、運用担当者が疲弊し、運用品質にも影響が出てしまいます。
    特に、監視アラートの発生数やチューニングの頻度については想定より工数が膨らみやすく、運用負荷が増大する原因となる
    可能性があるため、システム設計担当との十分なすり合わせが必要となります。

これらを避けるためには、システム設計段階から運用担当者の視点を取り入れることが重要です。
また、運用開始後も定期的なタイミングで運用の評価・改善を行い、組織的に継続的な改善をしていると示すとともに、
現場でのナレッジをフィードバックしてもらうような仕組みを設けておくとよいでしょう。

まとめ

今回は運用改善の一例を紹介しましたが、ここで運用改善の重要性について触れておきたいと思います。
システム運用の目的はシステムの安定稼働の確保ですが、それは現状維持とはまた異なるものだと考えています。
自動化で定型作業を減らし、運用リソースを最小化できれば、その分をUX改善や運用コスト削減等のシステム自体の改善に投資できます。
運用担当は、現場でユーザの声を拾える立場だからこそ、改善の起点にもなれる存在です。
そのような立場を利用した「攻めの運用」を大事にしています。

最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
明日は、ノーコードツールに関する記事です。お楽しみに!
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