スケジュール管理の“理想と現実”|WBSからマイルストーンまでの正しい流れ

システム開発において、スケジュール管理は「わかっているようで実は難しい」領域です。
WBS・ガントチャート・マイルストーンといった基本を知っていても、
現場では理想どおりに進まず、後になって問題が表面化することも少なくありません。
はじめに
こんにちは。クラウドソリューショングループのmoro.tです。
これまで複数のWebシステム開発に携わり、要件定義~製造・テストまで幅広い工程を経験してきました。
特に直近の案件では、PLとしてスケジュール策定やリスク管理を担当し、「理想どおりに進まないスケジュール」と何度も向き合うことになりました。
この記事では、私自身が実務の中で感じた スケジュール管理の理想と現実、そしてWBS・ガントチャート・マイルストーンをどう使い分ければよいのかについて、失敗談も交えながらまとめています。
- スケジュール管理の3つの基礎:WBS・ガントチャート・マイルストーン(役割と関係)
- 理想のスケジュール管理(あるべき姿)
- 現場でよく起きる実際のスケジュール管理
- よくある失敗とその原因:私が実際に経験した2つの落とし穴
- スケジュール管理の最重要ポイント
- まとめ
スケジュール管理の3つの基礎:WBS・ガントチャート・マイルストーン(役割と関係)
まず、この3つは「別々の管理手法」というより、スケジュール管理を構成する3要素として関連しています。
① WBS(Work Breakdown Structure)
→ 仕事を抜け漏れなく分解するための設計図
- プロジェクト全体を細かいタスクに分解する
- 抜け漏れを防ぐための構造化されたリスト
- 「何をやるか」を正式に定義する段階
用途:
プロジェクト開始時のタスク洗い出し、スコープ確認、見積もりの基盤。
② ガントチャート
→ WBSで分解した作業を時間軸に並べた実行計画
- タスクごとの期間、順序、依存関係を見える化
- 工数配分やリソース計画の調整に使う
用途:
プロジェクトの進行管理、調整、リスク発見、タスク同士の衝突確認。
③ マイルストーン
→ プロジェクトの節目を示すチェックポイント
- 要件定義完了、設計完了、リリース判定など「主要な合意点」
- 期間ではなくポイントで管理する
- 関係者間の認識合わせにも使われる
用途:
関係者間の合意形成、進捗確認の基準、遅延検知。
【まとめ:3つの関係性】
- WBS …「何をやるか」
- ガントチャート …「いつやるか」
- マイルストーン …「どこが重要な節目か」
つまり、1 → 2 → 3 の順番で使うことで、初めて破綻しにくいスケジュールが作れるという関係です。
理想のスケジュール管理(あるべき姿)
本や研修で語られる「理想のスケジュール管理」はこんな状態です。
- WBSで全体が漏れなく整理されている
- ガントチャートは常に最新
- リスクは事前に検知される
- マイルストーンで判断が適切に行われる
- 関係者が共通のスケジュールを見ている
- 変更は正しく管理されている
言い換えると、
「プロジェクトが計画どおりに進み、想定外が最小化された状態」です。
現場でよく起きる実際のスケジュール管理
対して、実際の現場ではこんなことが起きやすいです。
ケース①:WBSがただの「箇条書きのToDo」になりがち
- 粒度が統一されていない
- 担当者ごとに認識が違う
- 抜け漏れに気づくのは作業が始まってから
→結果:後工程での手戻りや遅延につながる
ケース②:ガントチャートが初期だけ綺麗問題
- 更新されない
- 進捗報告が口頭ベースになり形骸化
- リスクの早期発見ができない
→結果:気づいたときには遅延が発生している状態に陥る
ケース③:マイルストーンが「日付があるだけ」問題
- 判断基準が曖昧
- どこまで終わったら完了なのか定義されていない
- 関係者の合意形成が遅れる
→結果:節目でのズレが蓄積し、後半で爆発する

よくある失敗とその原因:私が実際に経験した2つの落とし穴
ここでは、私が実際にプロジェクト現場で経験した「スケジュール破綻の典型パターン」を2つ紹介します。同じようなミスを避けるためのヒントになれば幸いです。
失敗談①:概算見積もりの根拠を確認しないままスケジュールを作成してしまった
私が PL として別の案件に途中参画した際、
すでに開発リーダーから「本開発の概算工数」を提示されており、私はその数字をそのままカレンダーに当て込んでスケジュールを作りました。
参画直後でキャッチアップに必死だったこともあり、
「なぜその工数になるのか?」
「どの要素にどの程度の時間が必要なのか?」
などの根拠確認を怠ってしまったのです。
結果として、顧客から
「この工数の理由は?なぜその期間が必要?」
と聞かれた際に、自分の言葉で答えられないという状況に陥りました。
この経験から学んだのは、
工数見積もりの根拠を理解していないスケジュールは“説明できないスケジュール”であり、PL の責任を果たせないということです。
失敗談②:基本設計・詳細設計での追加工数を軽く見て、後半でスケジュール破綻
別のケースでは、
要件定義時にガントチャートでスケジュールを作り、顧客と合意済みでした。
しかし基本設計や詳細設計の段階で:
- 追加要望の発生
- 要件達成のために必要な作業が増加
- 想定より工数がかかる箇所が判明
といった変更が多く発生。
ただ、基本設計・詳細設計フェーズとしては期間内で収まっていたため、私はスケジュール調整を行いませんでした。
しかし当然ながら、その影響は後工程にも及びます。
そのまま実装フェーズに入った結果、
「設計時の増加工数が実装にも影響している」
と現場で判明し、実装中に全体スケジュールを見直す必要が生じてしまいました。
つまり私は、
設計の遅れは “設計フェーズ内の話” で終わらない
という当たり前の原則を見落としていたのです。
スケジュール管理の最重要ポイント
数多くの経験から言えるのは、次の3つが最重要ということです。
① WBSは丁寧に作る(8割はここで決まる)
WBSが甘いと、その後の管理すべてが破綻します。
「分解するのが目的」ではなく
抜け漏れを無くし、全体像を正しく描くことが目的。
② スケジュールは更新して初めて意味がある
ガントチャートは作った瞬間が最良になりがち。
本当に重要なのは 運用。
- リスク検知
- 調整
- リカバリー
- 変更管理
これらができて初めてスケジュール管理。
③ マイルストーンは判断基準まで定義する
ただ日付を置くだけでは価値が半減。
「何ができていたら完了?」
を必ず明文化する。
まとめ
スケジュール管理は「理想どおりにやらないと意味がない」というわけではありません。
むしろ、多くの現場は理想と現実の間で揺れています。
だからこそ、
- WBS→ガント→マイルストーンの正しい流れを理解すること
- 最低限押さえるべきポイントを明確にすること
- 現場特有の事情に合わせて柔軟に運用すること
これができれば、
「破綻しないスケジュール管理」 に近づけます。









