ノーコードは手段、改善を続けるための運用設計

業務運用の現場では、日々の対応が積み重なる中で、
いつの間にか管理や共有が追いつかなくなることがあります。
本記事では、そうした状態から抜け出すために取り組んだ運用改善の考え方と、現場に起き始めた変化について紹介します。
はじめに
こんにちは。アイソルートのIida.sです。
普段はインフラ系の運用保守業務やヘルプデスク業務を担当しています。
日々の業務運用の現場では、制度やルールの変更が避けられません。
申請内容や対象条件が変わるたびに、手順や管理方法の見直しが求められます。
一方で、現場では次のような状況が少なくありません。
- 対応履歴がメールや口頭、個人のメモに散在している
- 手順書が最新版かどうか分からない
- 管理資料が更新されず、現状が把握できない
- 担当が変わると、業務の進め方が分からなくなる
これらは、誰かの能力や努力が足りないから起きている問題ではありません。
変更が前提となる業務に対して、運用の仕組みが追いついていないことが、共通の背景としてありました。
本記事では、こうした状況に対して取り組んだ運用改善の考え方と、
その結果として現場に起き始めた変化について紹介します。
この記事は アイソルート Advent Calendar 13日目の記事です。
現場で起きていた問題の正体
運用の話になると、「属人化が問題だ」と語られることがあります。
しかし実際には、属人化そのものが原因ではありません。
属人化は、情報が残らない・共有されない運用が続いた結果として表面化する状態です。
現場を整理していく中で見えてきたのは、次のような構造でした。
- 情報が集約される場所がなく、探さないと分からない
- 更新作業が業務として組み込まれておらず、後回しになりやすい
- 変更があった際に、立ち戻る基準や判断材料が残っていない
この状態では、どれだけ担当者が工夫しても、
ミスや抜け漏れを完全になくすことは困難です。
問題の本質は人ではなく、
更新され続けることを前提に設計されていない運用構造にありました。
問題から見えてきた原因の整理
運用状況の確認や現場との対話を通して、
課題は次のように整理されていきました。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 原因① | 対応履歴が分散しており、全体像が見えない |
| 原因② | 運用ルールが人の記憶や善意に依存している |
| 原因③ | 変更内容が履歴として残らない |
| 原因④ | 制度やルールが変わるたびに、ゼロベースで対応している |
これらは個別の問題に見えますが、
共通して「情報が集まらず、積み重ならない」という特徴を持っています。
原因に対してのアプローチ
そこで取り組んだのは、
現場で見えていた困りごとを整理し、
利用者で検討・意思決定された内容を、
運用として無理なく回る形に落とし込んでいくことでした。
どのような仕組みにするか、どこから手を入れるかは、
日々の業務を把握している利用者側が中心となって検討し、
その検討を進める過程で、課題の整理や運用設計を支援しました。
具体的には、次のような対応が進められました。
| 課題(原因) | 対応内容・アプローチ |
|---|---|
| 原因①:対応履歴が分散していた | 対応内容や申請情報を一元的に管理できる形を検討し、 現場で使い続けられる運用として整理・定着を支援 |
| 原因②:運用ルールが人依存だった | 誰が対応しても同じ流れで進められるよう、 業務フローの整理と運用への組み込みを支援 |
| 原因③:変更内容が残らなかった | 手順や条件の変更が自然に履歴として残るよう、 記録の考え方や残し方を整理 |
| 原因④:毎回ゼロベースで対応していた | 過去の対応や判断を参照しながら進められる状態を目指し、 情報の持ち方・見せ方を整理 |
これらを実現する手段として、ノーコード・ローコードツールが活用されました。
ただし、重要だったのはツールそのものではありません。
更新や改善が特別な対応にならないよう、
日常業務の中で自然に回る前提を、
利用者側の検討内容として運用に組み込むことでした。
現場に起き始めた変化
今回の取り組みは、何かを一気に変えるようなものではありません。
しかし、運用の仕組みを整えたことで、現場には少しずつ変化が現れ始めました。
たとえば、次のような変化が見られました。
- 利用者側から、画面や運用に関する改善要望が自然に上がるようになった
- 手順更新が特別な作業ではなく、日常業務の一部として扱われるようになった
- 引き継ぎ時に「何から見ればよいか」が明確になり、不安が軽減された
- 制度やルールが変わった際も、影響範囲を整理しながら対応できるようになった
これらは、システムの機能によって直接もたらされた成果ではありません。
利用者側で検討された運用の方向性を、
現場とすり合わせながら形にしていったことで、
利用者自身が考え、手を動かせる状態に近づいた結果だと捉えています。
運用が誰か一人の工夫や努力に依存するのではなく、
「改善が回り続ける前提」で回り始めたこと。
それ自体が、この取り組みで得られた最も大きな変化でした。
まとめ
ノーコード・ローコードは、属人化を解消するための魔法ではありません。
本当に重要なのは、ツールをどう使うかではなく、運用が改善され続ける前提で設計されているかどうかです。
取り組みを通じて感じたことは、運用は誰か1人に依存するのではなく、
改善が回り続ける前提で回り始めたこと自体が、最も大きな変化だったという点です。
その変化を生むために意識していたことは、最初から完成形を提示することではありませんでした。
まずは利用者が日々感じている違和感や手間を丁寧に拾い上げ、どこから手を付ければ改善が回り始めるかを一緒に整理していくことです。
そうしたやり取りを重ねる中で、「入口の整理」が改善の起点になるという共通認識が生まれ、
その後の運用改善が少しずつ回り始めたのだと感じています。
制度やルールの変更が避けられない業務においては、
一度きりの改善ではなく、改善が続いていく状態をどう作るかが重要です。
本記事で紹介した取り組みは一例に過ぎませんが、利用者と対話を重ねながら、
改善が回り始めるきっかけを一緒に作っていくことが、運用の未来において大きな意味を持つと感じています。
最後に
次は社内申請アプリの紹介記事になります。お楽しみに!








