新時代無線規格Wi-Fi 6のポテンシャルと繋がる未来
新たな無線通信規格Wi-Fi 6が発表され、今は正に過渡期の真っ只中。
本記事ではWi-Fi 6について、スペックや技術的な側面、活用の可能性等をまとめました。
この記事は アイソルート Advent Calendar 17日目の記事です。
近年は多くの機器がワイヤレスで繋がる時代。それはオフィスという場でも変わりません。
アジェンダ
- Wi-Fi 6とは?
- Wi-Fi 6のスペック
- Wi-Fi 6の技術的特徴
- Wi-Fi 6の普及状況
- Wi-Fi 6の活用
- まとめ
1.Wi-Fi 6とは?
日常生活でもよく言葉にするWi-Fiという言葉ですが、これは無線LAN製品の普及を目的とした「Wi-Fi Alliance」という業界団体が作った言葉で、平たく言うと、Wi-Fiのマークがある機器同士なら通信できますよ、という印です。
※ちなみに、Wi-Fiが使われ始めたのが2003年ごろだそうです。
さて、Wi-Fi 6と言うくらいですので、当然6世代目のWi-Fi規格という事になります。
じゃあ、以前のWi-Fiは︖ 今使ってるWi-Fiは︖ というと下記の表をご覧ください。
IEEE規格での名称 | 正式名称 | ナンバリング | 策定年 |
IEEE 802.11n | Wi-Fi CERTIFIED 4 | Wi-Fi 4 | 2009年 |
IEEE 802.11ac | Wi-Fi CERTIFIED 5 | Wi-Fi 5 | 2014年 |
IEEE 802.11ax | Wi-Fi CERTIFIED 6 | Wi-Fi 6 | 2020年(予定) |
2.Wi-Fi 6のスペック
それをまとめた下記の表をご覧ください。
規格 | IEEE 802.11n Wi-Fi 4 |
IEEE 802.11ac Wi-Fi 5 |
IEEE 802.11ax Wi-Fi 6 |
使用電波帯 | 2.4GHz/5GHz | 5GHz | 2.4GHz/5GHz |
最大通信速度(理論値) | 600Mbps | 6.93Gbps | 9.6Gbps |
実行スループットの 一般的な上限値 |
約150Mbps | 約800Mbps | 1Gbps~? |
MU-MIMO使用時の 最大同時接続数 |
-(交互接続) | 4台 | 8台 |
使用電波帯に関しても、Wi-Fi 5時には5GHz帯のみになっていたのが、2.4GHz/5GHzの2バンド対応に戻っています。
両者の特徴比較は、下記の表をご覧ください。
電波帯 | 電波干渉 | 対障害物 | 距離 |
2.4GHz | 受けやすい | 強い | 遠くまで届く |
5GHz | 受けにくい | 弱い | 遠くまで届かない |
Wi-Fi 5時代よりも性能が高速化した上で、柔軟性も両立していると言えます。
MIMOは「Multi Input Multi Output」の事で、送信するデータを複数のデータに分割して複数のアンテナから出力(Multi Input)し、複数のアンテナで受信して1つのデータに復元(Multi Output)します。
データの通信を複数のアンテナで協力して行っているので、時間帯効率が大きく向上する機能となります。
MU-MIMOは複数ユーザに対するMIMOです。Wi-Fi 5時代にはダウンロード時のみ利用可能でしたが、Wi-Fi 6ではアップロード時にも利用可能なように強化されています。
また、MU-MIMOで利用可能なアンテナの本数も4本→8本と倍増しており、複数台接続した時の速度低下を防ぐ機能が、より高密度環境に適応できるように改良されています。
Wi-Fi 4では、シングルユーザMIMOを導入。Wi-Fi 5ではマルチユーザMIMOへ発展し、Wi-Fi 6でスペックアップ︕ という流れです。
以上から、Wi-Fi 6は従来よりも高速化した通信と、高密度な環境にも対応できる安定性を両立したスペックを持っていると言えます。
3.Wi-Fi 6の技術的特徴
※文章はCiscoの公式サイトより抜粋しています。
①1024 直交振幅変調(QAM)を使用した高密度の変調により、35% を超える高速バーストを可能にします
②直交周波数分割多重接続(OFDMA)に基づくスケジューリングにより、オーバーヘッドと遅延を削減します
③Target Wake Time(TWT)によってスケジューリングが向上し、デバイスのバッテリ寿命が⻑くなります
では順に見ていきましょう。
①1024 直交振幅変調(QAM)を使用した高密度の変調により、35% を超える高速バーストを可能にします
しかしデメリットもあります。振幅による分類を行う以上、外部要因によるノイズの影響をより多く受けてしまいます。ましてや、扱う種類が多くなると、誤認識する可能性も大きくなります。
例えば、振幅1〜100のうち、1〜50と51〜100で分類してた時、振幅±3のノイズが入ってきても誤認識をするのは振幅が48〜52の時ぐらいです。
これが、1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100で分類していたら、影響を受けるパターンも当然増えてしまい、ノイズに弱くなってしまいます。
②直交周波数分割多重接続(OFDMA)に基づくスケジューリングにより、オーバーヘッドと遅延を削減します
OFDMAがどの様に効率化を図っているかの概念を、居酒屋の座席数に例えて解説します。
例:最大20席の居酒屋のタイムスケジュール
〇従来の座席管理→5席単位
時間帯 | 7時台 | 8時台 | 9時台 |
予約状況 | 20人/20席 | 10人/10席 8人/10席 |
8人/10席 5人/5席 3人/5席 |
提供可能な残座席数 | 0席 | 0席 | 0席 |
〇新規の座席管理→1席単位
時間帯 | 7時台 | 8時台 | 9時台 |
予約状況 | 20人/20席 | 10人/10席 8人/8席 |
8人/8席 5人/5席 6人/6席 |
提供可能な残座席数 | 0席 | 2席 | 1席 |
従来だと、基本的に予約は5席単位で承っています。8時台ですと、8人の予約に8人の席を提供すればよいのですが、あくまでも5*2席での提供を行っています。9時台に至っては、4席も空きができます。
お店側としては、席の管理自体は簡単ですが、もし急に1人で飲みに来た場合、席が空いているのに座れない、という事になります。
新規のスケジューリングの場合、1席という最低単位で座席を管理しているため、必要な分だけ座席(リソース)を割り当てて、座席を最大限活用しています。
③Target Wake Time(TWT)によってスケジューリングが向上し、デバイスのバッテリ寿命が⻑くなります
4.Wi-Fi 6の普及状況
では、普及状況などはどうなっているのか、次の表をご覧ください。
時期 | 事柄 |
2018/10 | Wi-Fi 6発表 |
2018/12 | Ciscoより対応ルータ発売 |
2019/5 | Ciscoより対応APとコアスイッチの発表 |
2019/7 | 各種ベンダーより対応PCの発表 |
2019/8 | 同上 |
2019/9 | iPhone11発売、認証プログラムのスタート |
↓ | |
2020末 | Wi-Fi 6の標準化(予定) |
5.Wi-Fi 6の活用
①教育現場
②スタジアム
③オフィス
これらはあくまで一例ですが、PCもスマートフォンも1人1台が当然となりつつある時代、高密度の通信環境は身近な存在です。
Wi-Fi 6は、そんな時代の流れに寄り添った進化を遂げた新規格なのだと思います。
※注意点として、無線へ接続する端末(PCやスマホ)が全てWi-Fi 6対応でなければ、本記事で紹介をした機能が動かず、互換性が働き通信性能は劣化していきます。要件と環境に合わせた無線設計と活用を行う必要がありますのでご注意下さい。
6.まとめ
この通信規格の根本にある強みは、ITがより一層業務にも日常生活にも占める割合が増えていく時代に適応したものだという事です。
明日はnemoto.rさんのDynamics365記事の後編です。ご期待ください︕
# プラットフォームソリューショングループ(PSG)
クラウド、ネットワーク・サーバ など、ITインフラの技術やサービスに精通した部門。
また、ITサービスマネジメント分野のコンサルや運用設計、運用管理なども得意としています。
弊社は、システム開発だけではなく、インフラ領域のエキスパートも在籍しており、
例えば、クラウドシステム導入の際は、サーバ・ネットワークなどの基盤を含めた総合的なサービス提供が可能です。