Loading
BLOG 開発者ブログ

2019年12月17日

新時代無線規格Wi-Fi 6のポテンシャルと繋がる未来

 

新たな無線通信規格Wi-Fi 6が発表され、今は正に過渡期の真っ只中。
本記事ではWi-Fi 6について、スペックや技術的な側面、活用の可能性等をまとめました。

この記事は アイソルート Advent Calendar 17日目の記事です。

こんにちは。
プラットフォームソリューショングループのgoro.kです。
普段は、主にオフィスICTの端末・サーバ関連の設計や構築業務に携わっています。
近年は多くの機器がワイヤレスで繋がる時代。それはオフィスという場でも変わりません。
働き方改革で、テレワークを始め様々な業務形態を提案する上でも、無線通信は深く関わってきます。
そんな中、昨年に新たな通信規格としてWi-Fi 6が発表され、現在対応機器も各ベンダーより発表・発売されており、来年度末には標準化を完了させる予定という言葉も出ています。
この記事では、Wi-Fi 6がどのような位置づけの物なのか、どのような特徴を持つのかという点をまとめています。
読者の方々にとって、次世代への適応の一助となれば幸いです。

アジェンダ

  1. Wi-Fi 6とは?
  2. Wi-Fi 6のスペック
  3. Wi-Fi 6の技術的特徴
  4. Wi-Fi 6の普及状況
  5. Wi-Fi 6の活用
  6. まとめ

1.Wi-Fi 6とは?

 

日常生活でもよく言葉にするWi-Fiという言葉ですが、これは無線LAN製品の普及を目的とした「Wi-Fi Alliance」という業界団体が作った言葉で、平たく言うと、Wi-Fiのマークがある機器同士なら通信できますよ、という印です。

何故Wi-Fiが必要になったかと言うと、昔の無線LAN製品は、例え同一メーカーの機器であっても、相互接続が保証されませんでした。
つまり、ユーザは機器を購入し、実際に繋ぐまで相互接続が可能かわからなかったのです。
これは無線LAN製品の普及に大きく関わる問題だ︕ という事で「Wi-Fi Allianece」の認証プログラムをクリアした無線LAN機器に相互接続を保証する「Wi-Fi」という表記を付けよう、となって現在に至るわけです。
※ちなみに、Wi-Fiが使われ始めたのが2003年ごろだそうです。

さて、Wi-Fi 6と言うくらいですので、当然6世代目のWi-Fi規格という事になります。
じゃあ、以前のWi-Fiは︖ 今使ってるWi-Fiは︖ というと下記の表をご覧ください。

IEEE規格での名称 正式名称 ナンバリング 策定年
IEEE 802.11n Wi-Fi CERTIFIED 4 Wi-Fi 4 2009年
IEEE 802.11ac Wi-Fi CERTIFIED 5 Wi-Fi 5 2014年
IEEE 802.11ax Wi-Fi CERTIFIED 6 Wi-Fi 6 2020年(予定)
一番左の「IEEE規格での名称」は馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
そして、来年策定予定の「IEEE 802.11ax」に向け、ナンバリング表記が2018年10月に導入されました。
内容は変わりませんが、Wi-Fiの括りの中で世代がわかりやすくなった、という事です。

2.Wi-Fi 6のスペック

 

最新規格のWi-Fi 6は、当然最新を名乗るにふさわしいスペックを持っています。
それをまとめた下記の表をご覧ください。
規格 IEEE 802.11n
Wi-Fi 4
IEEE 802.11ac
Wi-Fi 5
IEEE 802.11ax
Wi-Fi 6
使用電波帯 2.4GHz/5GHz 5GHz 2.4GHz/5GHz
最大通信速度(理論値) 600Mbps 6.93Gbps 9.6Gbps
実行スループットの
一般的な上限値
約150Mbps 約800Mbps 1Gbps~?
MU-MIMO使用時の
最大同時接続数
-(交互接続) 4台 8台
まず、重要度の高い最大通信速度(理論値)が約1.4倍になり、実行スループットは約4倍となると予想されています。
実行スループットの一般的な上限値は、まだ過渡期のため確定していませんが、Cisco(世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社)が4倍を目標として掲げています。
ここまでの通信スペックがあれば、現在では難しいと言われている8K映像のストリーミングも可能になると言われています。

使用電波帯に関しても、Wi-Fi 5時には5GHz帯のみになっていたのが、2.4GHz/5GHzの2バンド対応に戻っています。
両者の特徴比較は、下記の表をご覧ください。

電波帯 電波干渉 対障害物 距離
2.4GHz 受けやすい 強い 遠くまで届く
5GHz 受けにくい 弱い 遠くまで届かない
どちらにもメリットとデメリットがあり、適しているシチュエーションも違います。
Wi-Fi 5時代よりも性能が高速化した上で、柔軟性も両立していると言えます。

MIMOは「Multi Input Multi Output」の事で、送信するデータを複数のデータに分割して複数のアンテナから出力(Multi Input)し、複数のアンテナで受信して1つのデータに復元(Multi Output)します。
データの通信を複数のアンテナで協力して行っているので、時間帯効率が大きく向上する機能となります。

MU-MIMOは複数ユーザに対するMIMOです。Wi-Fi 5時代にはダウンロード時のみ利用可能でしたが、Wi-Fi 6ではアップロード時にも利用可能なように強化されています。
また、MU-MIMOで利用可能なアンテナの本数も4本→8本と倍増しており、複数台接続した時の速度低下を防ぐ機能が、より高密度環境に適応できるように改良されています。
Wi-Fi 4では、シングルユーザMIMOを導入。Wi-Fi 5ではマルチユーザMIMOへ発展し、Wi-Fi 6でスペックアップ︕ という流れです。

以上から、Wi-Fi 6は従来よりも高速化した通信と、高密度な環境にも対応できる安定性を両立したスペックを持っていると言えます。


3.Wi-Fi 6の技術的特徴

 

Wi-Fi 6の技術的特徴について、本記事では以下の3点を解説します。

※文章はCiscoの公式サイトより抜粋しています。

①1024 直交振幅変調(QAM)を使用した高密度の変調により、35% を超える高速バーストを可能にします
②直交周波数分割多重接続(OFDMA)に基づくスケジューリングにより、オーバーヘッドと遅延を削減します
③Target Wake Time(TWT)によってスケジューリングが向上し、デバイスのバッテリ寿命が⻑くなります

では順に見ていきましょう。

①1024 直交振幅変調(QAM)を使用した高密度の変調により、35% を超える高速バーストを可能にします

QAMというのは、波形にデータを割り当てる手法を指します。
・振幅小さめ、数値は正スタート→データ︓00
・振幅小さめ、数値は負スタート→データ︓01
・振幅大きめ、数値は正スタート→データ︓10
・振幅大きめ、数値は負スタート→データ︓11
と言った感じです。そして、QAMの前についている数字が扱う波の形の種類を示します
Wi-Fi 5時代には256QAMだったのが、1024QAMとなり1024種類の波を扱う事が可能になりました。
当然、以前と同じ波の⻑さで、より多くの種類のデータを送れるようになったという訳です。

しかしデメリットもあります。振幅による分類を行う以上、外部要因によるノイズの影響をより多く受けてしまいます。ましてや、扱う種類が多くなると、誤認識する可能性も大きくなります。
例えば、振幅1〜100のうち、1〜50と51〜100で分類してた時、振幅±3のノイズが入ってきても誤認識をするのは振幅が48〜52の時ぐらいです。
これが、1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100で分類していたら、影響を受けるパターンも当然増えてしまい、ノイズに弱くなってしまいます。

速度の向上を図った分、安定感を犠牲にしてしまった形ですが、ここ部分を次の点で補っています。

②直交周波数分割多重接続(OFDMA)に基づくスケジューリングにより、オーバーヘッドと遅延を削減します

通信の中で使用できる帯域、いわばスペースの上限は決まっています。
多数の通信を同時に行う際は、そのスペースの貸し出しを効率的に行う必要があります。これがスケジューリングの基本です。
従来のスケジューリングは、どのような通信にも一定のスループットを提供する形でした。
具体的には、1つの通信だけがある時間帯も、4つの通信が同時に行われる時間帯も必ず80MHzは割り当てられていました。
これに対して、Wi-Fi 6のスケジューリングは996のブロック(サブキャリアとも呼びます)に区分けし、通信に適したリソースを提供します。

OFDMAがどの様に効率化を図っているかの概念を、居酒屋の座席数に例えて解説します。
例:最大20席の居酒屋のタイムスケジュール
〇従来の座席管理→5席単位

時間帯 7時台 8時台 9時台
予約状況 20人/20席 10人/10席
8人/10席
8人/10席
5人/5席
3人/5席
提供可能な残座席数 0席 0席 0席

〇新規の座席管理→1席単位

時間帯 7時台 8時台 9時台
予約状況 20人/20席 10人/10席
8人/8席
8人/8席
5人/5席
6人/6席
提供可能な残座席数 0席 2席 1席

従来だと、基本的に予約は5席単位で承っています。8時台ですと、8人の予約に8人の席を提供すればよいのですが、あくまでも5*2席での提供を行っています。9時台に至っては、4席も空きができます。
お店側としては、席の管理自体は簡単ですが、もし急に1人で飲みに来た場合、席が空いているのに座れない、という事になります。
新規のスケジューリングの場合、1席という最低単位で座席を管理しているため、必要な分だけ座席(リソース)を割り当てて、座席を最大限活用しています。

このように、きめ細かい管理を行う事でチャンネルの競合防止や、各通信時間の削減を図りつつ、通信の安定性の向上を実現しています。

③Target Wake Time(TWT)によってスケジューリングが向上し、デバイスのバッテリ寿命が⻑くなります

TWTとは、アクセスポイントと端末で通信を行うタイミングを事前にネゴシエーションしておく機能の事です。
複数機器がある時に、次に通信したい端末がただ待機している時間が勿体ないので、「その時間帯は別の端末と通信する時間帯ですから、貴方は〇〇の時間まで待っていてくださいね」と事前に取り決めておきます。こうする事で、待ち時間中はスリープし、バッテリの無駄を減らす事も、Wi-Fi 6では可能になっています。

4.Wi-Fi 6の普及状況

 

ナンバリングが発表された2018年10月にWi-Fi 6が発表され、早一年ほどが過ぎました。
では、普及状況などはどうなっているのか、次の表をご覧ください。
時期 事柄
2018/10 Wi-Fi 6発表
2018/12 Ciscoより対応ルータ発売
2019/5 Ciscoより対応APとコアスイッチの発表
2019/7 各種ベンダーより対応PCの発表
2019/8 同上
2019/9 iPhone11発売、認証プログラムのスタート
2020末 Wi-Fi 6の標準化(予定)
今年に入ってから、対応している機器が徐々に増えている、といった状況です。
すでにリリースされている対応機器は、いわば高価なハイエンドモデルが多く、安価なエントリーモデルは標準化完了予定の来年度末ごろまでに出揃うのでは無いか、と言われています。
ちなみに、Wi-Fi 6は下位互換性があるため、Wi-Fi 6のルータを用いてWi-Fi 5を利用する事も可能となっています。この点は、移行を考えると嬉しい部分だと思います。

5.Wi-Fi 6の活用

 

ここまで、Wi-Fi 6が「これまで以上の通信速度」と「高密度環境下での安定性」を両立させた新規格である事をお話してきました。
では、実際どのような所に導入すると高い効果を生むと予想されるのか。いくつか例を挙げてみたいと思います。

①教育現場

近年、情報教育の重要性が盛んに唱えられ、学校に配置されているPCの台数も増えました。講義でもスマートフォンやノートPCを活用する学生が増えています。
当然、人数も相応になりますから、通信が渋滞を起こしやすい環境と言えます。私自身、学生の頃は学食に設置されている大学のWi-Fiの遅さに苦戦した思い出があります。
このような様々な通信が想定される高密度環境こそ、Wi-Fi 6の出番と言えるでしょう。

②スタジアム

野球やサッカーのスタジアムも、高密度な環境です。
最近は、アプリで選手の情報や試合の情報など手軽に入手できるようにもなっています。ただし、通信端末が多いと通信にも悪影響が出てきてしまいます。当然、試合内容と情報の入手にラグが発生しては、ユーザを満足させることができません。
この高密度かつ速度が欲しい環境は、まさにWi-Fi 6を求めている環境と言えます。

③オフィス

最早どのような業務にもPCは欠かせません。その中にはファイルサーバへのアクセスや、情報収集のためのWeb閲覧、VDI環境との通信等が含まれています。
オフィスは、通信速度が業務の効率・快適さに直結する環境です。人が増え、拡大するほどに1人あたりの通信速度効率が下がってしまうのは良い状況とは言えません。
常に最高速度のパフォーマンスが欲しいという環境でも、安定性が売りのWi-Fi 6は適していると思います。

これらはあくまで一例ですが、PCもスマートフォンも1人1台が当然となりつつある時代、高密度の通信環境は身近な存在です。
Wi-Fi 6は、そんな時代の流れに寄り添った進化を遂げた新規格なのだと思います。

※注意点として、無線へ接続する端末(PCやスマホ)が全てWi-Fi 6対応でなければ、本記事で紹介をした機能が動かず、互換性が働き通信性能は劣化していきます。要件と環境に合わせた無線設計と活用を行う必要がありますのでご注意下さい。


6.まとめ

 

Wi-Fi 6のメリットである「進化した通信速度」と「高密度環境下での安定性」、その能力が発揮されていくで
あろう場についての考察をまとめました。
普及状況から見るに、来年の今頃までにも多くの動きがあり、様々なWi-Fi 6対応製品が出る事かと思います。

この通信規格の根本にある強みは、ITがより一層業務にも日常生活にも占める割合が増えていく時代に適応したものだという事です。

今後、オフィスや学校などで、人もPCも増えたら通信が遅くなってしまい、業務や授業に支障が出た︕ なん
て事も増えていくと思います。
そのために、Wi-Fi 6という存在はより快適な通信環境を提供し、より高度なIT社会の実現に寄与していくのでしょう。
もし、どこか人の多い環境でWi-Fi 6対応の機器を見つけたら、本記事を思い出していただきながら、快適な通
信環境をご利用いただければ幸いです。
お付き合いいただき、ありがとうございました︕

明日はnemoto.rさんのDynamics365記事の後編です。ご期待ください︕


# プラットフォームソリューショングループ(PSG)

クラウド、ネットワーク・サーバ など、ITインフラの技術やサービスに精通した部門。
また、ITサービスマネジメント分野のコンサルや運用設計、運用管理なども得意としています。
弊社は、システム開発だけではなく、インフラ領域のエキスパートも在籍しており、
例えば、クラウドシステム導入の際は、サーバ・ネットワークなどの基盤を含めた総合的なサービス提供が可能です。